◆迷子の迷子の池内蔵太◆
| 藤崎 誠 | ほら!がんばって積めよー! もう少しだからなー! あ、それは陶器だから気を付けるんだぞ? |
| 日雇い | おーす! |
| 藤崎 誠 | 千屋ー!赤根くーん! 水は後だ!先に食料を積んでくれ! |
| 千屋 寅之助 | はーい!! |
| 赤根 武人 | 艦長、了解です! |
| 藤崎 誠 | 頼んだぞー! ムッ……あいつら……!? ……コラー!!お前らサボってるんじゃない!! |
| 池 内蔵太 | ひぃっ!!!見つかった!!! |
| 望月 亀弥太 | え、ええやろう!ちくっと休憩するくらい! |
| 池 内蔵太 | みんなから艦長任されたからって わしらをこき使いすぎじゃ! |
| 望月 亀弥太 | 大体なんで正社員のわしらまで 日雇いと同じ事をせにゃならんがじゃ! |
| 藤崎 誠 | 末端の仕事を知らずに立派な航海士になんかなれるもんか!! |
| 平井 加帆 | まあ、藤崎様は叩き上げですからね。 地中海で航海をしてらした頃は 港で積み荷の上げ下ろしをやった後水夫に転向して、 提督に働きぶりを見込まれて航海士になったうえ 二番艦の艦長を任されるまでになったそうですわよ。 |
| 藤崎 誠 | ま、まぁ。 加帆さんの言うそれは半分成り行きだけどね。 |
| 池 内蔵太 | か、加帆さんまで手伝うちゅうが!? |
| 平井 加帆 | わたくしはやってみたくて藤崎様に手伝わせて欲しいって ワガママ言ったんですの。 結構楽しいですわ。 |
| 望月 亀弥太 | く、くそう…… 加帆さんがこがに清々しい笑顔で汗水垂らして働く中 わしらが休んでるなが、かっこ悪すぎる……。 |
| 池 内蔵太 | うおおおおお! こうなりゃ自棄じゃ!! 土州男児の肝っ玉をお見せしてさしあげるぜよー!!! |
| ドタドタドタ…… | |
| 平井 加帆 | まあ、あんな重い物持ってあんなに走られて…… やればできるじゃありませんか。 |
| 望月 亀弥太 | ははははは。 まあ、土州男児っていうより ペットの土佐犬みたいやけどにゃぁ。 |
| 平井 加帆 | うふふふふ! そうですわね!! |
| 藤崎 誠 | ほら、望月も上手いこと言ってないで働け!! |
| 望月 亀弥太 | あーもう、分かったき、そがにせっつきなや! |
――んで、 |
|
| 藤崎 誠 | ようし! そこまでー!!! 明日の出港までゆっくり休めよー!!! |
| 望月 亀弥太 | ふー。 終わった終わった。 |
| 赤根 武人 | たまには肉体労働も悪くないですね。 程よく動いてスッキリしました。 ……千屋君は随分頑張られたみたいですけど。 |
| 千屋 寅之助 | わ、わしは自分の身がかかっちゅうきに……。 |
| 望月 亀弥太 | 龍馬の身代わりだもんなぁ……。 ……がんばれよ、寅。 |
| 千屋 寅之助 | ……はい。ううっ……。 がんばって稼がないと……。 |
| 望月 亀弥太 | それにしても、ええ汗かいた。 帰って風呂でも入るかのう。 |
| 平井 加帆 | ええ、そうしましょう。 |
| 藤崎 誠 | さ、そうと決まったらとっとと戻るぞ! あれっ……? 池はどこ行った? |
| 望月 亀弥太 | さあ? ……ま、ほっときゃ戻ってくるやろう。 |
| 藤崎 誠 | そうだな。 ……帰ろ帰ろ! |
長崎:亀山地区:亀山社中 |
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| 藤崎 誠 | ただいまー! |
| 新宮 馬之助 | ええところに! |
| 平井 加帆 | あら、どうしたんですの? |
| 陸奥 宗光 | グラバー邸から藤崎さんにお客さんが来てますよ。 |
| 平井 加帆 | まあ! お茶でもご用意いたしますわね。 |
パタパタパタ…… |
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| 藤崎 誠 | あっ……加帆さん! もう、働きづめなのに……。 |
| 赤根 武人 | それで、お客さんというのは? |
| テーラー | 私デス。 ご注文の品をお届けに伺いマシタ。 |
| 望月 亀弥太 | おっ!!グラバーさんとこのテイラーさんか! |
| テーラー | 早速着てミテ下さい。 サイズが合わなケレばお直しいたシます。 |
| 望月 亀弥太 | おおっ!!カッコええのうー! |
| 藤崎 誠 | へぇー。 私のは結構タイトなんだな。 赤根君のはストレートなラインだなぁ。 |
| 赤根 武人 | 印象がシャキッとしますね。 |
| テーラー | デザインもそれぞれに合うヨウに 少し変えサセテいただいてイます。 お気に召しましたデショウか? |
| 赤根 武人 | ええ! ありがとうございます。 ……着てみましょうか。 |
| 藤崎 誠 | そうだな。 |
――只今着替え中、しばらくお待ち下さい…… |
|
| 望月 亀弥太 | ふー。なんとか入った。 あれから美味いもんいっぱい食うたきに 入らんかったらどうしよう思うた。 |
| 藤崎 誠 | 上野さんが“腕が良い”って言っていただけあるな。 きちんとフィットしてるし動きやすい。 |
| 赤根 武人 | なんだか立派な人になったような気分です。 テイラーさん、ありがとうございます。 |
| テーラー | お気に召してイタダケたようでなにヨリです。 |
| 望月 亀弥太 | ああ、テイラーさん。 内蔵太は今おらんきに、不都合が在れば後で連絡するぜよ。 |
| テーラー | ハイ。 デハ、お会計のホウを…… |
| ペラッ…… | |
| 藤崎 誠 | ゲッ……請求書…… |
| 望月 亀弥太 | ひっ!こがな金どこから出るがじゃ! |
| 赤根 武人 | か、亀山社中から出ませんか? |
| 藤崎 誠 | バーカ!借金するほど困ってるのに出せるか! はい、私の分はおとなしく支払いますよ。 |
| テーラー | ハイ、丁度イタダキます。 望月さん達もお支払いいただけナイと 困りますネぇ……。 私も善意ダケではやっていかれまセンので……。 あまり酷いと大浦のオ慶サンに 身を売っておカネの面倒を見てもらわナイと…… |
| 望月 亀弥太 | ……藤崎、貸して。 |
| 赤根 武人 | ぼ、僕も……。 |
| 藤崎 誠 | ……しょうがない。 後で倍返しだからな! |
| 望月 亀弥太 | こ、高利貸しかおんしゃ!!! |
| 赤根 武人 | あ、あうう……もう少しなんとかなりませんか? |
| 藤崎 誠 | じゃあ貸さない。 お慶さんとこで一生飼われて暮らすんだな。 |
| 望月 亀弥太 | うっ……うそうそうそうそ! 分かった!倍返しするぜよ! |
| 赤根 武人 | ……すいません。倍返しします。 ついでに今いない池君の分も貸しておいてください。 |
| 藤崎 誠 | よし、商談成立! はい、テイラーさん。 |
| テーラー | どうも。アリガトウございました。 そうでした。 藤崎サンには特別にプレゼントがあります! これは、旦那様の好意ですので ドウゾお受け取り下さい。 |
| 望月 亀弥太 | こがな華やかな服 ……藤崎に似合うかのう? |
| テーラー | それは改まった席向けの女性用の装束デス。 何かの役に立つのではとのコトですので。 |
| 藤崎 誠 | 豪華なドレスだなぁ…… ……本当に貰っちゃっていいんですか? |
| テーラー | モチロンです。 旦那様、藤崎さんの生き方に感銘を受けていたようでしたから。 “カタリーナ・デ・エランツォみたい”だって……。 |
| 藤崎 誠 | カ、カタリーナ!? ええい!あの執念深い女と一緒にするな!!! |
| テーラー | ??? |
| 赤根 武人 | ……かたりぃな? |
| テーラー | スペインの女海賊デス。 男装して祖国を守るために戦っていたと言う……。 でも、大昔の人なんで顔見知りのヨウナ藤崎さんの反応は チョット不思議なんですケド……。 |
| 藤崎 誠 | ちょ、ちょっと、ち、知識として知ってるだけだ。 (大航海時代を旅した時に会っただなんて言えない……) |
| テーラー | ソウデスカ。 ともかく、貰って下さい。 では、私はこの辺で失礼しマス。 今後ともゴヒイキに。 |
| スタスタスタ…… | |
| 赤根 武人 | ありがとうございましたー! |
| 望月 亀弥太 | ありがとう! |
| 藤崎 誠 | さて、着物に着替えるか。 |
| 望月 亀弥太 | あれっ? もう着替えるが? |
| 藤崎 誠 | なんかやっぱ着物のが落ち着く気がするし。 それにどうせだから明日の出港に着ていこうと思ってさ。 |
| 望月 亀弥太 | なるほど! わしもそうしよ! 赤根君は? |
| 赤根 武人 | 僕も出航の時に着ることにします! |
| スタスタスタ… | |
| 平井 加帆 | あら、お客様はお帰りになられたんですの? |
| 藤崎 誠 | うん。 |
| 平井 加帆 | まあ!洋装ですか! ステキですわね! |
| 望月 亀弥太 | ス、ステキだなんて…… |
| 赤根 武人 | 照れますね…… |
| 藤崎 誠 | バカかオマエら。 “ステキ”なのは服のほうだ服のほう!! |
| 望月 亀弥太 | ち、ちくっと夢見さしてくれたってええやろう! |
| 赤根 武人 | 藤崎君はいつも残酷です……。 |
| バタバタバタ…… | |
| 沢村 惣之丞 | おっ!洋装じゃ! |
| 千屋 寅之助 | カッコええのう……。 |
| 岡本 健三郎 | わしも着てみたいのう。 |
| 赤根 武人 | それでしたらグラバー邸に行けば仕立てていただけますよ。 |
| 高松 太郎 | グラバー邸かぁ。 |
| 安岡 金馬 | ほいたら、明日にでも行ってみるかのう。 |
| 陸奥 宗光 | 楽しみだなぁ! ……ところで、あの五月蠅い池さんは? |
| 望月 亀弥太 | そういや帰って来んのう…… |
| 藤崎 誠 | ま、ほっときゃ帰ってくるよ。 |
| 平井 加帆 | あら? 藤崎様、そちらもお洋服ですの? |
| 藤崎 誠 | ああ、これね。 グラバー邸で採寸するときに女なのバレちゃって…… 気を利かして女物の服作ってくれたみたいなんだ。 |
| 平井 加帆 | ……まあ! 着てみましょうよ!折角ですから! |
| 藤崎 誠 | ええっ!? い、いいよ。着なくて。 |
| 平井 加帆 | 勿体ないですわ!! さあ、早く!!! |
| 藤崎 誠 | ご、強引だなぁ…… |
――再びしばらくお待ち下さい |
|
| 藤崎 誠 | ……どう? |
| 赤根 武人 | !?!? |
| 千屋 寅之助 | ……誰ですろうか? |
| 陸奥 宗光 | 藤崎さんだろう? さっきの服だし。 ……着る服によって全然印象が違うって言うか…… 上手く女に化けたって言うか…… |
| 藤崎 誠 | ……なんだその言い方 |
| 近藤 長次郎 | あ、その喋り方……やっぱ藤崎さんじゃ。 ……奇っ怪な。 |
| 高松 太郎 | ぷぷっ! “奇っ怪”って! |
| 赤根 武人 | 長次カさん、言い方が絶妙ですね。 |
| 藤崎 誠 | ……もうお前ら許さない!! 片っ端からぶん殴って再起不能にしてやる!!! |
| 赤根・千屋・陸奥・近藤・高松 | ギャーッ!!! |
| 沢村 惣之丞 | ……藤崎さんは何着ても結局藤崎さんか…… けんど……さっきはまんまと騙されたのう……。 |
| 望月 亀弥太 | ああ……お藤さんじゃ。 |
| 岡本 健三郎 | お藤さん? |
| 望月 亀弥太 | コイツ、前に女の格好して“藤”って名乗って わしらを欺き続けた事があったがじゃ。 あんときゃわしも内蔵太も龍馬も中岡も……みぃんなすっかり騙されて…… ……今思うと情けのうて悔しゅうて……! |
| 新宮 馬之助 | はっはっは! ……あっ!! もう!藤崎さん! 寅之助と赤根君は明日出航だから大目に見ちゃって下さい! |
| 藤崎 誠 | ……くそう……今度言ったら鮫の餌だからな! |
| 千屋 寅之助 | ひ、ひぃ、ごめんなさい。 |
| 赤根 武人 | もう言いません……。 |
| 新宮 馬之助 | 所で、明日からの航海、下関までって言うてたけんど 誰を連れて行くがじゃ? |
| 藤崎 誠 | 会計は私が兼任するよ。 饅頭屋を連れて行くと 私の居ない間に社中の金の管理をする奴がいなくなるからな。 それと、望月に操舵、千屋に操帆を任せようと思う。 |
| 望月 亀弥太 | わしが? |
| 千屋 寅之助 | ええがですか? |
| 藤崎 誠 | うん、龍さんが望月には操舵手の資質があるし 千屋は風を読む感覚に優れているって聞いたんだ。 2人とも勝先生の所で学んだことを活かしてほしい。 さらに、赤根君には水夫達を管理してもらいたい。 |
| 赤根 武人 | ぼ、僕があの荒くれをまとめられるでしょうか……? |
| 藤崎 誠 | 荒くれなら奇兵隊も同じようなもんだろう? 一時でもあいつらの上に立っていたんだ。 大したもんじゃないか。 |
| 望月 亀弥太 | けんど、行き先が長州やったら赤根君危ないやろう。 |
| 藤崎 誠 | 大丈夫だ。 髷を落として洋装になってもらう。 そうすれば一目では誰だか分からないよ。 それに、万が一何かあっても私が全力で護りきる! |
| 望月 亀弥太 | ……なるほどなぁ。 しっかし洋装は余計目立たんか? |
| 平井 加帆 | そうですわね……。 |
| 赤根 武人 | 僕ももう長州の人間であることへの拘りは捨てます。 今は亀山社中の人間…… 先の戦の件で長州の者に裏切り者呼ばわりされる言われもないでしょう。 自分の身を、自分の想いを守るためならば 刀を抜く覚悟もあります! |
| 望月 亀弥太 | 穏健主義の赤根君が……逞しゅうなったのう……。 |
| 赤根 武人 | でも、剣で道を切り開けるほどの自信はないので もしまずそうだったらその時は手を貸して下さいね。 |
| 藤崎 誠 | 長州にいる間は離れるんじゃないぞ? |
| 平井 加帆 | うふふ。 百戦錬磨の藤崎様がいらっしゃればきっと大丈夫ですわ! |
| 望月 亀弥太 | かっ、加帆さん、わしは!? わしやってこれでもあの池田屋の修羅場を…… |
| 藤崎 誠 | なにを! 増援に助けられたくせに! |
| 望月 亀弥太 | く、くっそう……。 言い返せん……。 ……で、内蔵太はどーする?……おらんけんど。 |
| 藤崎 誠 | うーん……池は船を動かすには実践経験がないから 平常時は食料と水、武器の管理と手入れ。 その間、現場の感覚を叩き込んでおく。 それと、なんかの拍子に戦闘になったら砲を任せたい。 |
| 新宮 馬之助 | なるほど。 |
| 平井 加帆 | ……あ、あの……わたくしも同行したいのですが……。 |
| 藤崎 誠 | じゃあ、加帆さんには料理長と船医をお願いするよ。 短い船旅だけど疲労した船員の面倒も見てやって欲しいんだ。 もし時間が空いたら甲板の掃除も手伝ってやって。 |
| 平井 加帆 | はい! ……医学を学んでいて良かったですわ! ……それにしても池様、どうしたんでしょう? |
| 望月 亀弥太 | 大方仕事疲れ忘れとうてどっかで飲んぢゅうがやろう。 明日出航じゃ言いゆうに……。 |
| 平井 加帆 | 仕方ないですわねぇ……。 さ、今夜は早く寝ますわよ!! 皆さん!今日は晩酌無しですからね!! |
| 近藤 長次郎 | えっ!?わしらまで!? |
| 平井 加帆 | あたりまえですわ |
| 高松 太郎 | そんなぁ……。 |
| 陸奥 宗光 | ……加帆さん、やっぱり日に日に逞しくなってる……。 |
| 平井 加帆 | ゴチャゴチャ言うのは後にして! 今はとにかくお風呂入ってらして下さい! 早くしないとご飯が冷めてしまいますわよ! |
| 藤崎 誠 | (あの上品な加帆さんが“おかあちゃん”みたいになってる……) |
――翌日 大浦地区:船上 |
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| 藤崎 誠 | ええい!池はどこ行った!!! |
| 望月 亀弥太 | 藤崎、ちくっと落ち着きやぁ。 ……けんど、内蔵太のやつどーこほっつき歩いちゅうがじゃ。 今日の出航を楽しみにしちょったのに……。 |
| 千屋 寅之助 | そうですよね……藤崎さん、何かあったんやないですか? |
| 藤崎 誠 | ……確かに、いい加減心配になってきた……。 何か嫌なことに巻き込まれていたりしなければいいんだけど……。 |
| 赤根 武人 | ……僕、池君の捜索に当たります! 出航時間までに何かしら情報が得られれば後は長崎に残るみんなに…… |
| 望月 亀弥太 | 駄目じゃ。 内蔵太がおらんとなると余計赤根君の手が必要やき、そういう訳にゃいかん。 おんしが居らんでどうやって水夫を動かすがじゃ。 内蔵太の担当分もわしらでやらないかん言うのに! |
| 藤崎 誠 | ……そうだな。出航を遅らすわけにはいかない。 ……冷たいようだけれど亀山社中としての責務を放棄することはできない。 池のことは残った者達に全て任せる!! 出港準備を始めろ! 些細なところでも点検は怠るな!! |
| 一同 | おーう! |
……トタトタトタ |
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| 平井 加帆 | ……藤崎様ー!!! |
| 藤崎 誠 | 加帆さん! 血相変えて……何かあったの? |
| 平井 加帆 | 池様が!池様が!! |
| 藤崎 誠 | 池が!? |
| 平井 加帆 | こ、こっちですわ!! |
食糧庫 |
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| 藤崎 誠 | あっ!バカ!!! ……何やってる!!! |
| 池 内蔵太 | こ、腰が……う、動けん…… |
| 望月 亀弥太 | ……ぎっくり腰か。 |
| 千屋 寅之助 | 張り切って重いもの持つから……。 |
| 池 内蔵太 | うう……バカとはなんじゃバカとは……。 い、息するだけでも苦しいいうのに……。 |
| 藤崎 誠 | 勝手に食料漁るな!!! |
バキッ!! |
|
| 池 内蔵太 | あ゛!!! |
| 望月 亀弥太 | 藤崎!腰狙うたらいかんやろう! |
| 池 内蔵太 | 吉村の時といい……英さんの時といい…… 人の痛いところばっか狙うて殴る極悪人め……。 |
| 藤崎 誠 | ぎっくり腰なんかになるアンタが悪い! |
| 池 内蔵太 | ……無理したわしもあほやった。 けんど、おんしゃらも冷たすぎじゃぁ……。 わしが居らんのにほったらかしで…… ううっ……ちくっとくらい探してくれたってええやろう……。 ……一晩中ずっと真っ暗で一人ぼっちで苦しくって……寂しゅうて…… う……うわぁぁぁぁぁぁん! |
| 望月 亀弥太 | ああ、スマンスマン……泣きなやぁ…… |
| 藤崎 誠 | 情けない野郎だ。 |
| 池 内蔵太 | ……酷い |
| 藤崎 誠 | ……その分じゃ航海は無理だな。 赤根君!コイツを医者に運ぶよう手配してくれ。 ……池、大人しく寝て早く治せ。 一月後までにはきちっと航海に出られるようにしておくんだ。 |
| 池 内蔵太 | ……解ったぜよ |
| 赤根 武人 | では、池君、行きましょうか。 船外に出るまでは僕がおぶります。 |
| 池 内蔵太 | ありがとう。 ……情けないのう……わし……。 |
| 赤根 武人 | (池君) |
| 池 内蔵太 | (なんじゃ?) |
| 赤根 武人 | (藤崎君、ああ見えて結構心配していたんですよ。 さっきだって……) |
| 池 内蔵太 | (あいつが?……まさかぁ) |
| 赤根 武人 | (ふふふ。あの方の仲間思いな所は池君が一番解っているんじゃないですか?) |
| 池 内蔵太 | (……うーん……確かに天誅組でも、池田屋の時も、禁門の変でも あいつは命がけで仲間を庇うてた…… けんど……わしが酷い目に遭ってもそうしてくれるかのう?) |
| 赤根 武人 | (僕は藤崎君はそうせずにいられない人なんだと思います) |
| 池 内蔵太 | (……こがにコケにされちゅうのに?) |
| 赤根 武人 | (僕自身も普段は結構酷いこと言われますけど 藤崎君には助けられましたから。 ちょっと冷たいのもあの人なりの愛着の表れなんですよ。きっと。 ほら、いるじゃないですか。好きな子をいじめる人って。 藤崎君ってそういった所があるんじゃないでしょうか?) |
| 池 内蔵太 | (……ふ、藤崎に好かれんのも考えもんやにゃぁ……) |
| 赤根 武人 | (……考え物ですよね。……ふふっ。 けど、ああいう生き方もいいなって最近思えるんです。 しっかりと時勢を見据えて思いの異なる人ともきちんと向き合って 身の回りを心から大切にして……それでいて恩着せがましさがない。 ……そういうのって結構難しいと思いますよ。 何か大きな事を成し遂げるのも素敵ですが ああいう生き方も選択肢として考えたくなりました) |
| 池 内蔵太 | (……生き方かぁ…… そうやにゃぁ……後世に名を残す一世一代の大仕事ってのにも憧れるけんど 人間それだけやないのかもなぁ……) |
――しばらく後のこと |
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| 赤根 武人 | 艦長。水、食料、集荷の点検完了しました。 池君が食べた分以外は異常なしです。 ……それと、池君のことなんですが 今回同行できない事は残念がっていましたけど しっかり治すから心配するなとのことです。 |
| 藤崎 誠 | そうか。 ……まったく、ぎっくり腰で済んでよかったよ。 どっかでのたれ死んでたりしたらどうしようかと思った。 |
| 赤根 武人 | そうですね。 事件でなくて何よりです。 |
| 千屋 寅之助 | 船内異常なし! 総員配置につきました! 出港準備完了です! |
| 望月 亀弥太 | 藤崎!いつでもええぞ!! |
| 藤崎 誠 | よし、出航だ! ……望月、操舵頼んだぞ! |
| 望月 亀弥太 | おう!まかせぇや! |
| 藤崎 誠 | 千屋、操帆は任せた。 噂の風読みを見せてくれ! |
| 千屋 寅之助 | 風ならもうわしの味方ですきに! |
| 藤崎 誠 | 赤根君、水夫達の士気はアンタにかかってる。 頼んだぞ! |
| 赤根 武人 | 了解です。 |
| 藤崎 誠 | 碇を上げろ! 帆を下ろせ! 目標、長州!下関!! |
| 一同 | おおーっ!!! |
| 平井 加帆 | ……それにしても社中の皆さんが見送りにいらしてないですわね。 |
| 藤崎 誠 | 冷たいなぁ。 ちょっとくらい送りに来てくれたっていいのに。 |
そのころ……亀山社中の居残り組は…… グラバー邸 |
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| 新宮 馬之助 | わしも洋装がしたい!! |
| 高松 太郎 | わしもわしも!!! |
| 沢村 惣之丞 | わしもじゃ! |
| 岡本 健三郎 | わしにも!! |
| 近藤 長次郎 安岡 金馬 |
グラバーさん、是非わしらに洋服を!! |
| 陸奥 宗光 | 俺にも! なっ!頼むよう!! |
| テーラー | ……マタ亀山社中ですか……毎度騒がしいですネぇ…… あッ……旦那様!? |
| グラバー | カ、カメヤマシャチュー……!!! |
……グラバーを発狂させていた。 |
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